平和な世界で生まれ育って、今も心に"少女"が住み着いている。
大人ってもっと立派で凄いものだと思っていた。
「困ったことがあったら、周りの大人を頼るんだよ。」
幼い私に、母がよく言っていた。
ピアノ教室に電車で通っていた小学生時代。
例えば車内やピアノ教室までの道中で、誰かに何かされても
誘拐されそうになっても、怪我をしても
大人に言えば対処してもらえる。解決できる。だから大丈夫って。
そう思っていた。
それから15年経った今、私はその"大人"になった。
町を歩いていて、電車に乗っていて、偶然小学生が怪我をしたり
危険なことに巻き込まれそうになったりしたとき。
頼れる大人が私しかいない、そんなときに
私は瞬時に正しい判断ができるのだろうか。
見ず知らずのその子を守ることができるのだろうか。
子ども時代の私が一人でいるとき、危害を加える人はいなかった。
それはたまたま運がよかっただけ。今も昔も変わらず、平和ボケしている私。
ふとそんなことを考えた夜。
何かの本で読んだけど、人間って
してもらったことのあること、しか
人にしてあげることができない、らしい。
小学生で駅のベンチに絵具セットを忘れたとき、駅員室まで届けてくれた人。
高校の制服を着て道に迷ったとき、病院までの道を教えてくれた人。
就活生のとき、黒髪を一つに結び上下スーツで駅前のコンビニに行ったら、何も言わずにコピー機の順番を譲ってくれた人。
今の私にできることは、これくらいかもしれない。
将来、息子か娘を持ったとき、もう少し今よりも大人になれているかも。
そんなことを考えながら、今日もコーヒーを淹れる。